今年度の
活動

『犬山で秀吉さんと桃山芸術を学ぼう』が開催されました

2023/10/30

2023年 10月28日-29日
犬山市 青龍山 瑞泉寺 / ホテルインディゴ犬山有楽苑

桃山の美とこころ 信長・秀吉・家康の遺したもの 犬山で秀吉さんと桃山芸術を学ぼう が開催されました。
瑞泉寺では秀吉像本堂御座や、寺宝の公開、講演や舞踊などが行われ、ホテルインディゴ犬山有楽苑では、「豪壮・絢爛と優婉」な世界へ 桃山芸術の映像と秋の草花・紅葉を組み合わせたインスタレーションが展示されました。

青龍山 瑞泉寺の様子

ホテルインディゴ犬山有楽苑の様子

本事業への寄稿文を、犬山歴史研究会 会長 丸山和成様よりいただきましたので掲載させていただきます。

「犬山と丈草」

犬山歴史研究会 会長 丸山 和成

愛知県犬山市は県の北部に位置する人口七万人ほどの市である。昨今、国宝犬山城は、全国的に人気を集め、コロナ禍が収まってからは、また多くの観光客で賑わっている。

 市の北側には木曽川が流れ、岐阜県と接している。その木曽川扇状地の「扇の要」に位置し、尾張平野へと広がっていく。その風景は、古来、多くの人々を魅了し、文献にもその絶景を愛でる数々の記録が残されている。

 「木曽川とその支流飛騨川の合流点今渡から下流の愛知県犬山市に至る約十三キロメートルを日本ラインとよぶ。木曽川は、美濃太田盆地の西縁に連なり、岐阜・愛知県境をなす秩父中・古生層の尾張丘陵を侵食し、横断してつくる渓谷美と、木曽川に迫ってそびえる犬山城は、好一対の絵巻物をみるようである。一九一三年(大正二)三月、地理学者志賀重昂が、ドイツのライン川が連想されるとして、「誠に是れ一幅ラインの縮図」と褒めたたえたことがきっかけで、日本ラインと通称されるようになった。」(日本大百科全書)とあるのは、まさに木曽川の景観の素晴らしさを讃えたものである。

 犬山市は、昭和二十九年に「犬山町」「城東村」「羽黒村」「楽田村」「池野村」が合併して誕生した。したがって、現在の犬山市域は、旧犬山町だけでなく、東部の尾張丘陵から、西と南に広がる田園地帯まで多様な地理的、文化的な特徴を有する地域となっている。旧池野村には世界かんがい施設遺産「入鹿池」があり、旧羽黒村は、小牧長久手の戦いの前哨戦が繰り広げられた「羽黒八幡林」があり、山内一豊等が入った「羽黒城」も存在した。旧前原村は、江戸期の入鹿池築造によって転出した入鹿村の人々の子孫が、今もたくさん居住する。旧楽田村は、かつては「二の宮」と呼称された「大縣神社」や、小牧長久手の戦いで秀吉が陣を張った楽田城も存在した。

 現在、犬山市は文化財保護法第一八三条の三に基づく「文化財保存活用地域計画」を策定し、令和5年7月に文化庁長官から、その計画の認定を受けた。今後は全市を対象に、市の歴史文化資源の積極的な保存と活用が進められることとなっている。

 今回、令和五年十月二十八日、二十九日に開催された文化庁後援による「地域文化財総合活用推進事業」としての「犬山で秀吉さんと桃山芸術を学ぼう」と題する事業に参加する機会を得た。以下、瑞泉寺での催しに参加した折りの感想を記す。

「犬山・瑞泉寺で文化庁後援の文化芸術事業に参列。信長朱印状(瑞泉寺の復興の為、川並諸役を免ずる書で天下布武の印)、秀吉朱印状(本寺から枝柿、三百を貰った礼状)等を拝観。次に志野流香道、蜂谷貞統師の「献香の儀」。静寂の中、香立ての儀は、その奥義を垣間見る思いだった。献香後の寺僧による般若心経の読経は、磬子と太鼓の音に溶け合って本堂に響き渡り、私の体の中まで染みこんで、無心になる感覚を覚えた。次いで「奉納一管一踊」。野村鋒山師(人間国宝)の尺八と市川櫻香師(名古屋娘歌舞伎創設者)の舞踏。本寺開創の謂れにある泉の発見を表現した実に見事な舞も見ることができた。午後は「芭蕉と丈草」の講話。講師は元ボストン美術館長で俳人の馬場駿吉先生。縁あって人づてに拙書『犬山が生んだ蕉門十哲の一人、内藤丈草』も読まれたようで、講話で紹介していただいた。終了後、司会の市川櫻香師より、急遽、指名され、五七五の中に宇宙の真理に繋がる世界まで表現しうる俳諧の価値について一言、話させてもらった。この事業では、俳句関連や歴史関連の新たな方々との出会いもあり中味の濃い一日だった。」

拙書『犬山が生んだ蕉門十哲の一人、内藤丈草』は平成三十年に書き終えた資料で、犬山歴史研究会の講演会で発表した。私自身、俳諧の世界には縁遠い者ではあるが、犬山歴史研究会の一人として、市橋鐸先生の先駆的な研究書を頼りに、何とか勉強し、数々の現場を訪れて記録したもの。調べている内に、丈草のきめ細やかな感性と一面ずぼらな性格なども親近感が持てるようになり、師匠の芭蕉の褒め称えた句や芥川龍之介の賛辞などを目にして、一層、親しみとその感性の鋭さに目を見張るようになった。併せて、俳諧の世界の大きさ、奥の深さなども実感した。

以上、雑ぱくな文章だが、今回の記念誌の寄稿依頼の責をこれにてお許しいただきたい。貴重な機会を与えて下さった市川櫻香氏、馬場駿吉氏をはじめ、関係者に厚くお礼申し上げる。

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